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    シェーグレン症候群の角膜障害

    目次

    目がゴロゴロする、何か入っているような感じがするという症状は誰でも一度ぐらい経験しているのではないでしょうか。目の中を見ても、何も入っている様子はなく、目薬をつけてもなかなか良くならず、気になる症状が続いてしまうことがあります。この記事では目がゴロゴロする原因とその治療法について詳しく解説します。

    目がゴロゴロするメカニズム

    ゴロゴロは眼の表面からのサイン

    目がゴロゴロするのは、眼の表面に何らかの異常や刺激があるときに起こります。眼の表面は角膜(黒目)と白目の部分を覆っている眼球結膜、そしてまぶたの裏にも眼瞼結膜という組織があります。これらの知覚は三叉神経がつかさどっていますが、神経への刺激が脳に伝わるとゴロゴロ感や異物感または痛みとして感じます。

    角膜と結膜の知覚

    角膜と結膜の知覚は同じ三叉神経によるものですが、その鋭さには大きな差があります。角膜の知覚は極めて鋭敏で皮膚の数百倍とも言われています。一方、結膜の知覚は角膜と比べると比較的鈍感です。

    角膜はレンズの役割を持っている透明な組織で、眼の奥の網膜に光の焦点を合わせるための大切な組織です。角膜が障害されると、その透明性が損なわれる可能性があるため、わずかな異常も感知する必要があります。また外界に直接さらされているために、外部からの異物などに対しても、しっかりと防御する必要があります。そのため角膜には神経がとても密に存在していて、わずかな異常も感知したり、瞬きや反射的な涙の分泌を促して、角膜の防御をおこなっています。

    結膜は眼球の白目の部分と、まぶたの裏側を覆うほぼ透明な薄い膜です。眼球の表面を緩く覆い、眼球のバリアーとしての機能や眼球とまぶたの摩擦を減らし、スムーズな目の動きを助けています。また粘液を分泌することで涙を保持したり、免疫機能の一部も担っています。

    角膜や結膜に異常が起こると眼のゴロゴロ感や異物感の原因となりますが、角膜の方が知覚が鋭敏なため、結膜と比較してわずかな異常でも症状を感じやすいと考えられます。

    目がゴロゴロする主な原因と治療

    異物

    異物の種類や異物が眼の表面のどこにあるかによっても症状は変わってきます。日常診療で見かけるいくつかのパターンをお話しします。

    ・結膜の異物

    下まぶたの裏側に異物が入り混んでいる場合、異物は結膜に接していますので、先ほどお話ししたように結膜の知覚は比較的鈍感ですので、意外と症状は少ないかもしれません。下まぶたと眼球の間のスペース(結膜嚢と呼びます)はそれほどタイトではなくゆとりがあります。自分の抜けたまつ毛が入っていたぐらいでもあまり気がつかないかもしれません。もちろん刺激性のあるものであれば結膜に炎症が起こります。そのような場合は見た目でも充血があったり異物感も強くなります。

    上まぶたの裏側に異物が入り混んでいる場合は症状が強くなるかもしれません。特に上まぶたの裏側の眼瞼結膜に異物が張り付いている場合は、瞬きのたびに眼球の表面を異物が擦って、眼球の結膜(白目の部分)や角膜にキズがつきます。角膜にキズがつけば強い異物感や痛みの原因となります。上まぶたをめくってみたときに、白目と黒目の境目あたりに、強い充血がある場合はこのパターンかもしれません。平たく薄い異物は、よく眼瞼結膜に食い込んで、なかなか自然に取れないことが多いです。
    少し話がそれますが、最近多く受診される埋没法の糸が切れたりして露出した場合はこのパターンのように強い異物感がおこります。
    上まぶたの奥深くに異物が入り込む場合もあります。角膜にキズができることは少ないので、症状は比較的軽めですが、なかなか自然に出てくることが少なく、診察でも見つかりづらい場合もあります。診察ではまぶたの裏を見ますが、一回の翻転では見つからず、器械をまぶたにあてて、二重に翻転すると見つかる場合が稀にあります。

    眼瞼結膜異物
    まぶたの裏の結膜に貼りついた異物
    異物が擦れてできた角膜のキズ
    異物で擦れてできた角膜のキズ(染色)

    ・角膜の異物

    角膜に異物が張り付いている場合は異物感や痛みが強くでることが多くなります。ただし角膜は外見は黒く見えるので暗い色の異物などは、見た目でわかりずらいかもしれません。また異物があたってキズができた場合も強い症状がでます。角膜のキズは見た目ではわからず、蛍光色素で染色をして顕微鏡で観察すると良くわかります。角膜の知覚は鋭敏なので、小さなキズでも症状が起こります。

    角膜異物
    角膜の異物

    治療は異物を除去し、状況に応じて炎症を抑える点眼薬やキズが深い場合などは感染予防の抗菌点眼薬をつけていただきます。結膜は粘膜ですので自然に修復する力は強いです。角膜も表面の浅いキズは治癒が早いものですが、深いキズになると治癒に時間がかかったり、瘢痕になって混濁が残ってしまうことがあります。鉄粉が角膜に刺さってしまった場合ではサビがでてしまい、除去するのに手間がかかったりします。異物が入ったと思われる時は早い処置が大切です。

    結膜炎・角膜炎

    結膜炎は日常でよく見られる疾患です。外界にさらされている結膜には細菌やウィルスの感染、また花粉症などのアレルギーによって炎症が起こります。炎症が起こると結膜が充血したり腫れが起こります。特に結膜が水ぶくれのように腫れると、ゴロゴロと異物感が強くなります。
    結膜は瞬きをするたびに角膜と接します。結膜の腫れが強くなると、角膜にも影響を及ぼし、角膜にキズができてゴロゴロが強くなります。下まぶたは”あっかんべー”でよく見えますが、上まぶたの裏は自分ではなかなか見えづらい箇所です。上まぶたの眼瞼結膜にぶつぶつができたりすると角膜にキズができてゴロゴロが強くなります。

    アレルギー性結膜炎やコンタクトレンズが原因で、乳頭と呼ばれる大きなブツブツがまぶたの裏の眼瞼結膜にできることがあります。また春季カタルと呼ばれる重症のアレルギー性結膜炎では巨大な乳頭ができる巨大乳頭性結膜炎が起こります。乳頭ができると眼球結膜や角膜と擦れるため、ゴロゴロ感や異物が強くなります。

    眼瞼結膜の乳頭
    上眼瞼乳頭性結膜炎

    角膜炎は結膜炎に比べると頻度は少ない疾患ですが、細菌やヘルペスウィルスなどの感染性のものや、コンタクトレンズによるトラブルで起こるものなどがあります。角膜は知覚が鋭敏なので、何だかのトラブルが起これば比較的強い症状が生じることが多く、炎症に伴って充血が起こることもよくあります。

    結膜炎と角膜炎の治療は、原因を見極めて、それに対する適切な薬剤を使用することが大切です。細菌性のものか、アレルギー性のものか、またはウィルス性のものかなどを所見によって判断していきます。薬剤としては抗菌点眼薬や眼軟膏、ヘルペスウィルスに対しては抗ウィルス薬の眼軟膏、内服薬も使用されます。また炎症を抑えるステロイド点眼薬を上手く使うことも重要です。

    コンタクトレンズ装用者の角膜炎
    コンタクトレンズ装用者の無菌性角膜炎
    染色した角膜の様子
    蛍光染色した角膜の様子
    ヘルペス性角膜炎
    樹枝状潰瘍を呈するヘルペス性角膜炎
    ヘルペス性角膜炎
    蛍光染色で観察した樹枝状潰瘍

    ドライアイ

    ドライアイは、涙液の量が不足したり、涙の質が低下したりすることで、目の表面が十分に潤いを保てなくなる状態です。この状態になると、眼の表面が乾燥し、結膜や角膜にキズがでることがあります。特に角膜のキズが多くなるとゴロゴロ感を起こしやすくなります。ドライアイによる結膜や角膜のキズは肉眼ではわからないため、目を見ても何もないように見えますが、ゴロゴロ感がなかなか治らない、目がしみるなどの症状が続きます。

    ドライアイというと涙の量が減ることで起こると思っている方も多いと思いますが、そのようなタイプのドライアイは実際には多くありません。ドライアイの多くは涙の蒸発が亢進しているタイプが大多数を占めています。まぶたの縁にはマイボーム腺という油分を分泌している腺の開口部があります。マイボーム腺の機能が低下すると、分泌される油分の量が不足したり、油分の質が低下して、涙液の表面を覆う油層が不安定になり、涙の蒸発が亢進します。その結果、結膜や角膜にキズができたりします。蛍光色素で染色すると、結膜や角膜のキズが詳細に観察できます。

    頻度は少ないですが、涙液の分泌が低下するタイプのドライアイもあります。自己免疫疾患であるシェーグレン症候群では、涙腺や唾液腺などの分泌腺の機能が低下して、涙液が不足してしまうドライアイを起こします。この場合は、結膜や角膜のキズの程度も重症になることがあり、ゴロゴロ感などの症状も強く起こります。

    ドライアイの角膜障害
    ドライアイの角膜障害(蛍光染色)
    シェーグレン症候群の角膜障害
    シェーグレン症候群の角膜障害

    ドライアイの治療はその病態にあった点眼薬を適切に選択することが大切です。多くのドライアイは蒸発亢進型です。それらには粘液であるムチンの分泌を促進させる作用を持つジクアス点眼液(ジクアホソルナトリウム)やムコスタ点眼液(レバミピド)などを使用します。ただし、まぶたのマイボーム腺機能の低下があるような場合は、その原因となっているまぶたの炎症を改善させることが重要です。抗炎症点眼液や抗菌点眼薬などを併用します。

    涙液の分泌が減少している場合は、人工涙液の点眼で涙の量を補ったり、保湿効果のあるヒアルロン酸点眼液で眼の表面の涙液を長く留めるような治療をおこないます。また涙点プラグという栓を涙点(涙の排出口)に挿入して眼の表面の涙の量を増やす処置をおこなったりします。

    下涙点に挿入された涙点プラグ
    下まぶたの涙点に挿入された涙点プラグ

    その他の原因と治療

    上輪部角結膜炎

    輪部とは、角膜(黒目)と眼球結膜(白目)との境界部分を指します。上輪部とは、この輪部のうち上側の部分のことです。ここは、通常は上まぶたに隠れていて見えにくい部分ですが、まぶたの裏側(眼瞼結膜)との摩擦が生じやすいところでもあります。この部分に慢性的な炎症が起こるのが上輪部角結膜炎です。蛍光色素で染色すると、上輪部の結膜や角膜のキズが観察できます。

    症状はゴロゴロする異物感や痛みが起こり、なかなか治りにくこともしばしばあります。結膜や角膜にキズができたり、充血が見られます。まぶたの違和感や涙や目やにが増えることもあります。

    上輪部角結膜炎のメカニズムは完全に解明されていませんが、機械的な刺激や慢性的な炎症が原因として考えられています。以下にいくつかの関連する疾患を示します。

    ・ドライアイ

    上輪部角結膜炎の患者さんでは、ドライアイを併発しているケースが多く見られます。ドライアイでは、涙の量や質が低下することで、眼の表面の滑りやすさが悪くなります。そして、上まぶたと眼球の表面の摩擦が増えることで上輪部角結膜炎が発生すると考えられています。ドライアイの治療をすることで、上輪部角結膜炎が改善することがあります。点眼薬の治療や涙点プラグを使用して、眼表面の貯留涙液量を増やすことでドライアイを治療します。

    ・甲状腺眼症

    バセドウ病などによる甲状腺眼症ではまぶたの異常がよく見られます。特に上眼瞼挙筋に炎症が起こり、まぶたが引っ張られる上眼瞼後退(見開きが強くなる)が起こると、上まぶたと眼球の摩擦が強くなり、上輪部角結膜炎が起こることがあります。ステロイド注射など、まぶたの治療をおこなうことによって、症状の改善が得られる可能性があります。

    上輪部角結膜炎
    甲状腺眼症患者の上輪部の結膜充血
    上輪部の蛍光染色
    蛍光色素で染色される上輪部結膜のキズ

    ・上方の結膜弛緩症

    上輪部角結膜炎の患者さんでは、上輪部の眼球結膜に弛緩(たるみ)が見られることがあります。結膜を部分切除して結膜のたるみを改善させることで、上輪部角結膜炎の症状の改善を得られることがあります。手術は局所麻酔で10分程度で終わります。

    結膜結石

    結膜結石とは上まぶたの裏側の眼瞼結膜に小さな石状の沈着物ができる疾患です。上まぶたをひっくり返してみると、白色〜黄白色の小さな塊が観察できます。細胞の残骸や脂質やカルシウムなどが沈着してできると考えられています。小さなものでは無症状ですが、大きくなって結膜を破ってまぶたの裏に露出すると、眼球結膜や角膜と擦れてキズを生じてゴロゴロとした異物感を引き起こします。結膜結石は点眼麻酔をおこない、針やピンセットで簡単に除去することができます。

    結膜の表面に露出した結膜結石
    結膜の表面に露出した結膜結石
    結石が擦れてできた角膜のキズ
    結石で擦れてできた角膜のキズ

    結膜弛緩症

    結膜弛緩症とは、眼球を覆っている結膜が弛んでしまう状態です。結膜は眼球と緩くつながっていますが、それが過度に緩くなり、下まぶたの縁にたまってしまったり、重度になると角膜の方にまでせり出してしまいます。まばたきをするたびに、緩んだ結膜が角膜に擦れたりすると、ゴロゴロ感や異物感が強くなります。また涙の溜まる部分を弛んだ結膜が占拠することで、涙が常に溜まっているように感じたり、涙がこぼれる症状が出ることがあります。弛んだ結膜は、涙が眼球表面に均一に拡がることを障害して、ドライアイを悪化させることがあります。

    加齢による変化やドライアイも原因になると考えられています。物理的な刺激も原因となる可能性があり、甲状腺眼症で眼瞼の腫脹が強い場合や眼球突出により下まぶたが下方に後退している場合などでも結膜弛緩が見られる場合があります。

    結膜弛緩症の顕微鏡写真
    結膜弛緩症
    結膜弛緩症の蛍光色素染色顕微鏡写真
    結膜弛緩症蛍光色素染色

    結膜弛緩症の治療は、その程度によって決まります。ドライアイの症状には点眼液を使用します。症状が強い場合は手術治療が行われます。弛んだ結膜を切除したり、熱凝固によって収縮させる治療が行われます。

    マイボーム腺梗塞

    まぶたの縁にはマイボーム腺と呼ばれる脂質を分泌する腺の開口部があります。その開口部付近に脂質の小さな塊ができる疾患がマイボーム腺梗塞です。よく見るとまぶたの縁に白から黄白色の小さな塊として見えます。脂質の塊が徐々に大きくなって、開口部や眼瞼結膜から露出すると、眼球結膜や角膜に擦れてキズを作り、ゴロゴロとする異物感の原因となります。ほとんどのマイボーム腺梗塞は点眼麻酔をして、ごく小さく切開することで摘出できます。

    マイボーム腺梗塞
    下眼瞼のマイボーム腺梗塞
    マイボーム腺梗塞摘出した切開創
    摘出した切開創
    摘出したマイボーム腺梗塞
    摘出したマイボーム腺梗塞

    まとめ

    目がゴロゴロするメカニズムや原因となる疾患について解説しました。目のゴロゴロはとても不快なものです。眼科を受診してもなかなか症状が治らないこともあります。簡単にわかるものから、よく観察しないとわかりづらいものまで、さまざまな原因があります。

    甲状腺眼症では上眼瞼後退による上輪部角結膜炎をしばしば見かけます。上輪部角結膜炎の症状を良くするためにはまぶたの治療を行う必要があります。疾患の知識がなければ、適切な治療が施されない可能性があります。また、しばしばドライアや結膜弛緩症が見られることもあります。

    当院では目のごろごろ感や異物感の診療を丁寧におこなっています。眼の表面を詳細に観察することで原因を突き止めて、適切な治療へと繋げていきます。必要に応じて手術治療にも対応しています。ゴロゴロ感にお悩みの方のご相談をお待ちしております。

    この記事の監修

    院長

    伊藤学

    ・東京慈恵会医科大学附属病院
    ・東京女子医科大学糖尿病センター眼科
    ・富士市立中央病院眼科部長
    ・オリンピア眼科病院
    ・溜池山王伊藤眼科開設
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