朝起きたらまぶたが腫れていた。痛みも無いし目やにもでない、ものもらいでもなさそうだし?というような症状は血管性浮腫(クインケ浮腫)かもしれません。この疾患では何かしらの原因で、皮膚の下の血管の透過性が亢進することで、周囲の組織にむくみが起こります。あまり知られていない疾患ですが、日常診療では時々見かけます。今回は血管性浮腫の症状や原因、治療法についてお話しします。
血管性浮腫とは何か
血管性浮腫の基本的な症状
血管性浮腫は、クインケ浮腫とも呼ばれ皮膚や粘膜に突然現れる腫れを特徴とする疾患です。まぶたに起こる事も多く、眼科を受診される患者さんも多い疾患です。まぶた以外にも、腫れは、顔面、唇、舌、手足、性器などに現れることも多く、かゆみを伴うこともあります。また、気道の粘膜に腫れが起こると、呼吸困難や嚥下困難などの症状を伴う場合もあります。通常は腫れが改善するまでに数時間から場合によっては数日程度を要することもあります。症状は月に何度も起こることもあれば、何年か経ってから起こることもあります。
血管性浮腫の原因
血管性浮腫の原因は様々です。特定のアレルゲン(アレルギーの原因物質)によるアレルギー反応で引き起こされるものや、アスピリンなどの抗炎症剤、高血圧の薬、経口避妊薬、造影剤など、薬剤が誘発するものがあります。
また、血液中の好酸球が増加しているタイプがあります。この中には、症状を繰り返す反復性のものと、非反復性のものがあります。非反復性のものは、日本人の比較的若年女性に多く見られます。
血管性浮腫の中には血液中の特定の因子(C1-INH)に関連して起こるものがあります。C1-INHの不足や機能の低下が原因となります。これらには遺伝性のものと非遺伝性のものがあります。外傷や温度、運動やストレスなど様々なものが誘因となって症状が起こりますが、原因がわからないものもあります。血液検査によってC1-INHを調べることで診断できる場合があります。
血管性浮腫の治療
基本的な治療
血管性浮腫の基本的な治療は抗ヒスタミン薬の飲み薬です。蕁麻疹や花粉症、アレルギー症状に用いる薬剤です。症状が単発的に起こり、その後は再発がないこともありますが、短期間に症状を繰り返す場合などは、抗ヒスタミン薬をしばらく続けて内服します。また症状が強い場合などは、少量のステロイド剤を短期間内服することもあります。症状が軽い場合は、自然に治ってしまうこともありますが、症状が繰り返し起こる場合は受診が必要です。
C1-INH関連の治療
C1-INH関連の血管性浮腫の場合は、C1-インアクチベーター製剤(ベリナート)とブラジキニンB2受容体アンタゴニスト(フィラジル)を投与することで、症状を改善できます。
まとめ
血管性浮腫(クインケ浮腫)は突然のまぶたの腫れの原因となります。強い腫れが起こる事もあり、患者さんは、朝鏡を見てビックリしてしまいます。まぶたの腫れというと、点眼薬や塗り薬を処方される場合もありますが、血管性浮腫の場合はそれらの効果は低いものです。きちんとした診断のもと、効果的な薬を内服することが大切です。また、まぶただけでなく、他の部位に症状が現れることもあります。特に症状が繰り返すようであれば、放置せずに受診をしましょう。
当院では、抗ヒスタミン薬の院内処方が可能です。まぶたに関連する診療を幅広く行っております。まぶたの症状でお困りの方の受診をお待ちしております。