当院はバセドウ病による甲状腺眼症(バセドウ眼症)の専門診療を行っています。以前の勤務先であるオリンピア眼科病院で、10数年に渡ってたくさんの患者さんの治療に携わってきました。その経験を活かして、困っている患者さんのお役に立てればと考えております。その中でなかなか受診できない患者さんに向けてオンラインでの診療を行っています。今日はオンライン診療の実際についてお話しいたします。
バセドウ病と目の症状
まぶたの腫れ
まぶたの腫れはバセドウ病の目の症状の中で最も頻度が高いものです。まぶたを引き上げる筋肉やまぶたの周囲にある筋肉が腫れることでまぶたが腫れて見えます。また眼球の周囲の脂肪が大きくなることも原因となります。
まぶたの腫れがきっかけとなって、バセドウ病が見つかることもあります。まぶたの腫れは眼科の病気ではよくある症状ですが、点眼薬でもなかなか治らない、長引くまぶたの腫れがバセドウ病によるものだったということが時々あります。
眼球の突出
バセドウ病の目の症状で比較的よく知られているものに眼球突出があります。これは実際に眼球が正常より突出してしまう場合と見かけ上目が突出しているように見える場合があります。眼球は眼窩と呼ばれる骨の窪みに収まっています。バセドウ病では眼球の周囲の組織が腫れることで膨らみ、結果として眼球が前方へ押し出されてしまい眼球突出が起こります。では見かけ上の眼球突出とはどんな状態でしょうか。それは目が見開いてしまうことで起こります。上のまぶたが上がってしまい黒目(角膜)の上の白目(結膜)が見えてしまう状態になります。これらは、まぶたを上に引っ張る筋肉の腫れやまぶたを囲んでいる筋肉の緊張などで起こります。両方の症状が混在している場合もよくあります。
目の動きの障害と複視
バセドウ病では目の動きが悪くなり、物が二重に見える症状(複視)が起こることがあります。これは眼球を動かしている筋肉(外眼筋)が腫れることで起こります。眼球には6本の筋肉が付いていますが、バセドウ病では下側、内側、上側の筋肉の順で腫れることがわかっています。症状としては上方を見た時の複視が最も頻度が高く起こります。
オンライン診療の有用性
甲状腺眼症は視診が重要
甲状腺眼症(バセドウ眼症)では前項でお話ししたように、まぶたの腫れや眼球突出など外観的な症状が現れます。オンライン診療では画面越しに患者さんと向き合いながら診療をしますので、まぶたの状態や眼球突出の状態なども比較的よくわかります。また上や下に目を動かしていただくことで、まぶたの動きや眼球の動きなども把握できます。
事前に資料を送れる
甲状腺眼症(バセドウ眼症)の診断ではバセドウ病の状態やMRIなどの画像を見て総合的に判断していきます。オンライン診療の予定日より先にお持ちの資料を送っていただければ、あらかじめそれらを見て、目の現状について把握することができ、オンライン診療当日には目の現状についてすぐにお話しすることができます。オンライン診療で使用するアプリ内でも画像のデータを送ることができますので、血液検査の結果などは写真に撮って送付することができます。MRIなどの画像データはCD-ROMを郵送していただいても大丈夫です。
今までの症状の経過やどんなことが心配なのか、お聞きになりたいことなど、事前に記入していただくことも可能です。
遠方や時間のない方も可能
当たり前のことですが、日本全国どこからでも診療を受けることができます。専門の診療を受けてみたいけど、東京は遠くて無理かなとか、時間がないなとか。そういう方に是非ご利用いただきたいです。先ほどお話しした、事前に資料などを確認できていれば、時間を効率的に使えます。
ご希望により時間の延長が可能
正直なところ、通常の外来診療で一人の患者さんに多くの時間をとることは限界があります。甲状腺眼症で長い間目の症状に悩まされていたりすると、眼の現状や治療法について、ゆっくりと詳しく話が聞いてみたいということもあると思います。ご希望によっては通常の時間よりも長くお時間をとってお話をすることも可能です。
オンライン診療の実際
発症初期の患者さんの診療
先日、10代の患者さんからオンライン診療でご相談を受けました。1ヶ月前にバセドウ病の診断を受け服薬治療を始めたが、まぶたの腫れがあったため眼科を受診。そこで甲状腺眼症の診断を受け、まぶたに注射の治療をしていただいたとのことでした。バセドウ病については服薬後に甲状腺ホルモンの数値は下がってきたが、まぶたの腫れは悪くなっている感じがして心配だというご相談でした。
当日の診療
事前に血液検査のデータをアプリを通じて提供していただいていました。甲状腺のホルモンは正常値まで改善していましたが、目の症状の原因となる自己免疫を反映する自己抗体の数値はとても高い状態でした。
画面越しに患者さんのお顔を見せていただくと、両眼のまぶたの腫れと見開きの強さがありました。治療で行うまぶたの注射はステロイド剤を使用します。ステロイド剤は通常の液体のものと、徐放性と言って、懸濁した液体から徐々に薬の成分が放出されるタイプのものがあります。まぶたの注射で使用するものは徐放性のものがよく使われ、注射の効果は一定期間持続します。
患者さんとお母様には次のように説明しました。注射を打ってからまだ1ヶ月も経っていないことから、今後もう少し注射の効果が現れてくるかもしれない。まぶたの腫れや見開きの原因となっている筋肉の炎症が強い場合には、経過を見ながら注射を繰り返し行うことがある。一度の注射で完全によくなることは少ない。血液検査の結果をみると自己抗体の数値が高く、自己免疫が強い状態なので、目の症状も落ち着くまでにはある程度の期間が必要になる可能性が高い。薬によって甲状腺の数値が改善しても、それが直ちに目の症状の改善に反映されるわけではない。これらのことを説明しました。
患者さんも初めて聞いた内容などもあったようで、病気の理解に役立ったのではないかと思います。短い診療時間のなかで、患者さんに病気のことを理解してもらうのはなかなか難しいこともあります。他院で治療を受けている方でも、それを補完する目的で当院のオンライン診療を利用していただくこともとても良いのではないかと思います。
オンライン診療のまとめ
オンライン診療はだんだんと認知されてきていると思いますが、なんとなく面倒くさいように思ったり、画面越しにに話すのも気が引けるなと感じたりするのではないでしょうか。もちろん受診していただくほうが実際に治療をすることができたりメリットも多いことは間違いないと思います。しかし有用性でお話ししたようなオンライン診療のメリットもあります。また患者さんに、ある意味自由に使っていただいても良いと思います。決まった形式の診療ではありませんので、患者さんのニーズにお応えできるように時間を使うことが大切だと考えています。
アプリを入れたりと若干の手間はありますが、実際に受けていただくと意外と心地よく、受けて良かったと感じていただけるのではないかと思います。是非お気軽にお問い合わせ、ご予約をお待ちしております。以下のリンクで詳しいご案内をしています。