閃輝暗点は、突然視界に現れる光のギザギザやチカチカした模様が特徴的な症状です。視界の一部が見にくくなって不安に感じた方もいらっしゃると思います。眼科を受診することもありますが、多くの場合、数十分で症状はおさまるため、来院した時は症状もなく、診察でも眼に異常は見当たりません。この記事では、閃輝暗点の症状、原因、対処法、予防法について詳しく解説します。また、片頭痛との関連性や、医療機関を受診する際のポイントについてもご紹介します。
閃輝暗点とは?
閃輝暗点の症状
閃輝暗点とは、視界に一時的に現れる異常な光の模様や視野の欠損を伴う現象です。目の前に光のギザギザが現れたり、 チカチカと点滅するような感覚を覚えたりするのが特徴です。この症状は、通常数分から長くても1時間以内に自然に消失します。しかし、その症状は人によって異なり、視界の一部がぼやける、 視野が狭くなる、または物が歪んで見えるといったように感じられる場合もあります。閃輝暗点は、日常生活に影響を及ぼす可能性もあるため、 症状について正しく理解し、適切な対処をすることが重要です。
閃輝暗点と片頭痛の関係
閃輝暗点と片頭痛は、密接な関係があります。閃輝暗点は、片頭痛の前兆として現れることが知られており、 約3割の片頭痛患者さんが閃輝暗点を経験すると言われています。しかし、閃輝暗点は必ずしも片頭痛を伴うわけではなく、 頭痛を伴わない閃輝暗点も存在します。片頭痛を伴わない閃輝暗点では、視覚の症状だけなので、眼科を受診されることがよくあります。
片頭痛に伴う閃輝暗点は、頭痛が始まる数分から1時間前に現れることが多く、 頭痛の予兆として認識されることがあります。閃輝暗点の症状が現れた後に、吐き気、光過敏、音過敏などの症状が現れることもあります。 片頭痛をお持ちの方は、閃輝暗点の症状が現れた際には、早めに鎮痛剤を服用するなど、適切な対処をすることで、頭痛の悪化を防ぐことができる場合があります。
症状が現れた際の注意点
閃輝暗点の症状が現れた際には、まず落ち着いて安静にすることが大切です。 運転中や作業中に症状が現れた場合は、無理に続けずに、 慌てずに、安全な場所に移動し、楽な姿勢で休息を取りましょう。目を閉じて、深呼吸をすることで、リラックス効果を高めることができます。
頭痛を伴わない閃輝暗点も、決してめずらしいものではありません。閃輝暗点の症状だけが起こります。しかし、高齢者に起こった初めての閃輝暗点のような症状では、他の疾患を除外することも必要です。まれに、脳血管異常などが原因になっていることがあります。頭痛の有無にかかわらず、初めて閃輝暗点が現れた場合や、症状が頻繁に起こる場合は早めに受診しましょう。
閃輝暗点の原因
脳の血管の収縮と拡張
閃輝暗点の主な原因は、脳の血管の一時的な収縮と拡張と考えられています。 脳の血管が収縮することで、脳への血流が一時的に減少し、特に視覚をつかさどる後頭葉の血流が低下すると、視覚情報処理に異常が生じます。 その後、血管が拡張する際に、血流が急激に増加し、脳の神経細胞が過剰に興奮することで、閃輝暗点の症状が現れると考えられています。 血管の収縮と拡張は、様々な要因によって引き起こされる可能性があります。ストレスや疲労、睡眠不足、特定の食品、カフェイン、アルコール、 気圧の変化などが誘因となることがあります。また、女性ホルモンの変動も、閃輝暗点の原因となることがあります。 脳の血管の収縮と拡張は、個人差が大きく、同じような生活習慣を送っていても、閃輝暗点を経験する人としない人がいます。
ストレスと閃輝暗点
ストレスは、閃輝暗点の大きな誘因となることが知られています。精神的なストレスや肉体的な疲労が蓄積すると、身体のホメオスタシス(生体が内部の環境を一定に保つ仕組み)を乱し、脳の血管の調節機能に異常が生じやすくなります。ストレスによって、血管を収縮させる物質が放出されたり、 血管を拡張させる物質の働きが抑制されたりすることで、脳の血流が不安定になり、閃輝暗点が発生する可能性があります。 また、ストレスは、睡眠不足や不規則な生活習慣を引き起こし、さらに閃輝暗点を悪化させることもあります。 日頃からストレスを解消し、リラックスする時間を設けることが大切です。趣味を楽しんだり、運動をしたり、十分な睡眠を取るなど、 自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。
食品と閃輝暗点
カフェインの摂取、特定の食品の摂取が閃輝暗点の誘因となることがあります。チョコレート、チーズ、赤ワインなどの特定の食品には、チラミンという物質が含まれており、 血管を拡張させる作用があるため、閃輝暗点を引き起こす可能性があります。また、カフェインの過剰摂取は、自律神経を刺激し、血管の調節機能を乱すことがあります。
気圧と閃輝暗点
気圧の変化も、脳の血管に影響を与え、閃輝暗点を誘発することがあります。特に、梅雨時期や台風の接近時には、気圧の変化が大きいため注意が必要です。
女性の月経と閃輝暗点
女性の場合、閃輝暗点は月経周期と深く関係していて、月経前後に現れることが多くあります。この現象は、月経に伴う女性ホルモン(特にエストロゲン)の急激な変動が引き金となって起こると考えられています。実際、多くの女性が月経の2〜3日前から月経初日あたりにかけて、閃輝暗点を伴う片頭痛を経験しています。
片頭痛の対処法として、ホルモンの変動を緩やかにするための低用量ピルなどが使用されることがあります。また、頭痛ダイアリーを用いて月経周期と症状の関連を記録することも、適切な治療方針を立てるうえで非常に有効です。もし月経のたびに強い閃輝暗点や片頭痛が繰り返される場合は、「月経関連片頭痛」の可能性があるため、婦人科や頭痛専門医への相談が勧められます。
閃輝暗点の対処法
症状が出た時の応急処置
閃輝暗点の症状が現れた際は、まず落ち着いて楽な姿勢を取りましょう。特に、初めて閃輝暗点の症状が現れた場合は、不安になるかもしれませんが、落ち着いて対処することで、症状の悪化を防ぐことができます。 安全な場所で、目を閉じて、深呼吸を繰り返すと症状が和らぐことがあります。 暗い場所で静かに横になるのも効果的です。無理に目を動かしたり、明るい光を見たりすることは避けましょう。 症状が現れている間は、運転や危険な作業は控えましょう。症状が治まった後も、無理をせずに、しばらく休息を取るようにしましょう。水分補給も忘れずに行い、体調を整えることが大切です。
薬物療法
閃輝暗点そのものに対する特効薬は、現在のところ存在しません。閃輝暗点は片頭痛の前兆として現れることが多いため、閃輝暗点を伴う片頭痛の治療や予防に用いられる薬物が、結果的に閃輝暗点の頻度や症状の軽減につながることがあります。
生活習慣の改善
規則正しい生活習慣を送ることは、閃輝暗点の予防に繋がります。十分な睡眠を確保し、バランスの取れた食事を心がけましょう。 睡眠不足は、自律神経のバランスを乱し、血管の調節機能を低下させるため、閃輝暗点の誘因となることがあります。
運動は、ストレス解消にも繋がり、自律神経のバランスを整える効果も期待できます。喫煙や過度の飲酒は、閃輝暗点を悪化させる可能性があるため控えましょう。 生活習慣の改善は、閃輝暗点の予防だけでなく、健康維持にも繋がります。
受診の必要性
脳の検査
閃輝暗点が頻繁に起こる場合や、症状が重い場合は、 脳の検査を受けることをおすすめします。脳神経外科や頭痛の専門クリニックを受診し、適切な診断と治療を受けましょう。 また閃輝暗点と似た症状が片頭痛以外の疾患でも起こることがあります。脳の疾患や眼の疾患についてきちんと調べることも重要です。脳のCT検査やMRI検査などを行うことで、 脳の血管や神経に異常がないかを確認することができます。
眼科検査の重要性
眼球や視神経、脳の疾患でも、視界に異常が起こり、閃輝暗点と似たような症状が起こることがあります。初めて症状が出た場合は、眼科的検査をすることで閃輝暗点の可能性が高いことを確認できます。通常は閃輝暗点が収まった後では眼科検査で異常は認められません。
特に高齢者では眼球の網膜や視神経の疾患の発生率も高くなるので、閃輝暗点のような症状が起こった場合は念のためきちんとした眼科的な検査を行うことが大切です。
まとめ
閃輝暗点は、多くの場合一時的な症状であり、心配する必要はありません。しかし、初めて症状が現れた場合や症状が頻繁に起こる場合は、 医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。閃輝暗点の原因は様々ですが、脳の血管の収縮と拡張が関与していると考えられています。ストレス、 特定の食品などが誘因となることがあります。日頃から生活習慣に気を配り、閃輝暗点の予防に努めましょう。 十分な睡眠を確保し、ストレスを溜め込まないようにすることが重要です。
当院では眼科一般の幅広い検査が可能です。閃輝暗点は、眼科的な検査を行うことで、その診断をより確実なものにすることができます。また、必要に応じて、当院の近隣にあるCTやMRIの撮影が可能な画像専門クリニックや片頭痛の診断および治療が可能な脳神経外科専門クリニックをご紹介できます。閃輝暗点のような症状が気になる方は当院へご相談ください。