繰り返す白目の出血と結膜弛緩症

白目が気づいたら出血で赤くなっていたという経験がおありの方は多いのではないでしょうか。この出血は結膜下出血と呼ばれる物です。中には、頻繁に出血が繰り返して起こってしまい、見た目の悪さに困ってしまったり、体の病気のせいではないかと心配になることがあります。この結膜下出血は結膜弛緩症のある方に起こりやすいことがわかっています。今回は結膜下出血と結膜弛緩症の原因や治療についてお話しいたします。

白目の出血である結膜下出血とは

結膜下出血の原因

結膜下出血は、結膜の血管が破れ、出血することで起こります。結膜下出血の原因としては、さまざまな理由が挙げられていますが、ご本人に心当たりがないことも多くあります。お産の時や、重い物を動かしたりして、力んだ時に起こったりします。時には激しい咳やくしゃみの後に起こったり、強く目を擦ったり、目をぶつけるなどの外傷でも起こります。もうひとつの原因として白目の表面を覆っている結膜が緩んで弛む、結膜弛緩症と呼ばれる状態がある眼に多く起こります。

結膜下出血の症状

結膜下出血の症状は、白目が赤く塗ったように染まることです。血管が破裂することで起こるため、出血した血液が結膜の下に溜まり、白目が赤く見えます。通常、痛みなどはなく、自分では気づかないこともあり、他人から目が赤いよと指摘されて気がつくこともしばしばあります。

結膜下出血写真

結膜下出血の治療法

結膜下出血は、一般的に特別な治療は必要ありません。出血した血液は、数日〜1週間程度で自然に吸収されていきます。ただし、外傷などで出血が酷い場合や、視力に影響があると感じる場合は、眼球に問題がないかをきちんと検査しておく必要があります。

結膜弛緩症とは

結膜弛緩症の原因

結膜弛緩症は、目の表面を覆う薄い膜である結膜が、加齢や外的な要因によって弛緩してしまう状態です。結膜は、眼球の表面を保護し、潤滑にする役割を担っています。しかし、年齢を重ねるにつれて、結膜が緩んで、弛みとなります。また眼球の周囲の状況が結膜弛緩症の原因となることがあります。まぶたの腫れが強い場合や、何かしらの原因でまぶたの閉じが悪い場合などにも結膜弛緩症の原因となることがあります。

結膜弛緩症写真

結膜弛緩症の症状

結膜弛緩症の症状は、人によって異なりますが、多くは異物感や目の表面で何かが引っかかっているような違和感を感じます。また、結膜が弛緩することで、眼球が乾燥しやすくなり、ドライアイの症状が悪化するケースもみられます。それとは逆に、流涙を訴える患者さんもいます。涙に関連する症状は、弛緩した結膜によって、眼の表面の涙の拡がりが悪くなったり、元来、涙がたまるスペースである結膜と下眼瞼の間のスペースである涙液メニスカスが、弛緩した結膜があることでうまく機能しないことが原因となります。

眼表面の染色像

眼の表面をフルオロセイン蛍光色素で染色すると結膜弛緩症では結膜が弛んでシワになっている様子がよくわかります。また正常な涙液メニスカスがなくなっています。

結膜弛緩症の染色像
涙液メニスカス

結膜下出血の原因となる結膜弛緩症

結膜下出血と結膜弛緩症の関係

日常の診療で結膜下出血の患者さんを診察していても、結膜下出血の原因は明らかでないことが多いですが、一方で結膜下出血を繰り返し起こしている患者さんの中には、結膜弛緩症があることがたびたびあります。患者さんは、血圧が高いのではないかとか、脳に異常があるのではないかなどと、心配されていることがあります。そんな時は、結膜弛緩症の治療をすれば、出血の頻度が減る可能性がありますと説明します。

結膜弛緩症の点眼治療

結膜弛緩症の治療法は、症状の程度によって異なります。軽度の場合は、点眼薬による治療で改善が見込める場合もあります。結膜の炎症を抑える点眼薬を使用したり、潤滑性を高める効果があるドライアイの点眼薬を使用することがあります。しかし、繰り返す結膜下出血のような場合には、手術治療によって結膜の弛緩そのものを改善させることが重要と思います。

結膜弛緩症の手術治療の目的

結膜弛緩症の手術の目的は、弛緩して眼球の表面でだぶついている結膜を改善させ、結膜のだぶつきをなくすことです。だぶついている結膜は、涙の拡がりに悪影響を与えたり、涙液メニスカスの障害となります。その状態を改善させることで症状が緩和されます。繰り返す結膜下出血に対しても、結膜弛緩症の手術後に明らかに出血の頻度が減ることを経験します。

結膜弛緩症の手術治療の方法

結膜弛緩症の手術は、弛緩した結膜を切除する場合と弛緩した結膜を電気凝固することで縮めてしまう方法があります。どちらの手術も局所麻酔で行われ、結膜に少量の麻酔注射を行うか、点眼薬による麻酔のみで行うことができます。通常の所要時間は10~15分程度です。終了後は眼帯を装着して帰宅していただきます。当日の夜または翌朝には眼帯を外せます。その後は多少の痛みや異物感、白目の出血などはありますが、辛い症状を起こすことはほとんどありません。点眼薬をしばらくの間続けていただきます。

まとめ

結膜弛緩症は程度の差はありますが、加齢によって多くの方に見られるものです。なんとなく目がゴロゴロする、涙っぽいという症状は結膜弛緩症が原因となっていることがよくあります。特に繰り返す結膜下出血は結膜弛緩症が原因となっていることも多く、原因がわからず悩んでいる患者さんもいらっしゃるかと思います。当院では結膜弛緩症の手術を多く行なっております。症状でお悩みの方のご相談をお待ちしております。

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