麦粒腫の切開:症状から治療

麦粒腫の切開:症状から治療

麦粒腫はまぶたに発生する細菌感染による炎症性疾患で、場合によっては切開手術が必要です。この記事では麦粒腫の症状から治療法、切開手術について解説します。

麦粒腫について

麦粒腫の原因と症状

麦粒腫とは、まつ毛の毛根や腺が細菌感染を起こして炎症を引き起こすものです。目の縁が赤く腫れたり、まぶたの内側にしこりのようなできものができることが典型的な症状です。通常、麦粒腫は痛みを伴い、腫れは数日から数週間で大きくなることがあります。また、腫れた部分に膿が溜まり、白っぽく見える場合もあります。

麦粒腫の治療法

麦粒腫は細菌感染が原因なので、抗菌薬の点眼や軟膏が基本的な治療法として用いられます。抗菌薬は、細菌の増殖を抑え、炎症を鎮める効果があります。点眼薬は、通常1日数回、患部に点眼します。軟膏は、通常1日数回、また寝る前にも患部に塗布することで就寝中も治療効果を高めることができます。また抗菌薬の内服を併用することがあります。

 

切開治療の適応

薬による治療で改善が得られない場合や腫れや痛みが強い場合は、切開手術が必要になることがあります。切開手術は、局所麻酔で行われ、患部に小さな切開を加えて膿を排出します。切開手術の時間は短時間です。皮膚を切開して排膿する場合は切開創の縫合が必要になることがあります。また、まぶたの内側、粘膜から切開する場合は、創は自然に閉鎖するので縫合の必要はありません。

 

霰粒腫との違い

霰粒腫でもまぶたにしこりができて、赤く腫れ、痛みを伴うことがあります。このような霰粒腫は急性霰粒腫とか化膿性霰粒腫などと呼ばれることがありますが、霰粒腫に細菌感染による炎症が起こったものとされています。麦粒腫と症状は類似していますが、その成因は別のものです。霰粒腫の内部には肉芽腫と呼ばれる腫瘤があり、手術治療ではこの肉芽腫を丁寧に切除することが必要です。一方、麦粒腫では細菌感染による炎症なので抗菌薬による消炎を中心として行い、必要に応じて切開手術を行います。

 

切開をした症例

マイボーム腺の感染

この患者さんはマイボーム線に細菌感染による炎症が起きています。1週間前から下まぶたの腫れと痛みが続いていました。まぶたの縁にはマイボーム線の開口部が並んでいますが、そのうちの一つの開口部に白い膿が溜まっているのが観察できます。開口部の周囲は赤く腫れて盛り上がっています。

マイボーム線開口部の膿
マイボーム腺開口部の膿点

内麦粒腫

マイボーム線は油分を分泌する脂腺ですが、まぶたの中の瞼板の中を通って、縁の開口部につながっています。マイボーム腺の細菌感染による麦粒腫は内麦粒腫と呼ばれます。まぶたの内側の結膜には白く膿の溜まった腫瘤が観察できます。周囲の結膜は炎症を起こし赤く腫れています。

切開前の内麦粒腫
膿が透見できる腫瘤

切開

今回のない麦粒腫は比較的小さい物でしたので、小さく切開することで排膿できました。点眼麻酔をおこない、鋭利なメスで結膜を切開しました。ほとんど痛みは無く処置ができました。術後1週間には炎症は改善し、腫瘤も消失しました。麦粒腫は、切開することなく、抗菌薬の使用で治癒することも可能ですが、症状が比較的長い場合や痛みなどが強い場合は、切開したほうが早く確実に治癒できる可能性があります。

内麦粒腫切開後
切開後治癒した麦粒腫

まとめ

切開で治療した麦粒腫の症例を紹介しました。麦粒腫は抗菌薬の使用など通常適切な治療で治癒させることができます。切開手術は症状が重い場合や長引いている場合などで有用です。手術時間も短く患者さんの負担も軽いものです。麦粒腫はまれに糖尿病や高齢者など免疫力の低下している方などでは、炎症が強くなり、症状が重くなることがあります。そのような場合では積極的に切開を行なっても良いと思います。
当院では麦粒腫の治療に対応していますので、お困りの方のご相談をお待ちしております。

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