埋没法は、手軽に二重まぶたを作ることができる美容形成手術ですが、数年後に目がゴロゴロするなどの問題が発生することがあります。よくあるケースは糸が切れて断端が露出してしまい、白目(結膜)や黒目(角膜)にキズができてしまいます。今回は、埋没法による目のゴロゴロの原因と対処法について、当院での症例も提示して詳しく解説します。
埋没法とは
埋没法の手術方法
埋没法は、まぶたの裏側から皮膚に糸を通すことで二重まぶたを作る手術方法です。通した糸を皮下に埋没することで埋没法と呼ばれます。皮膚の大きな切開を伴わないため、ダウンタイムが短く、比較的気軽に受けられる手術として人気があります。手術方法は様々あり、通す糸の本数や通し方も多くのバリエーションがあります。
瞼板法と挙筋法
手術はまぶたの裏の糸を通す位置によって瞼板法と挙筋法があります。瞼板法ではナイロン糸を瞼板と呼ばれる比較的硬い組織に通糸します。瞼板は結膜や角膜に密に接する箇所です。表面には露出しないように糸を通しますが、通糸が悪かったり、時間の経過とともに糸が露出してしまうことがあります。そうすると結膜や角膜を露出した糸が擦ってキズをつけてしまうことがあります。
挙筋法は上眼瞼挙筋という筋肉に通糸する方法ですが、結膜や角膜の障害を起こすことは稀です。
埋没法による目のゴロゴロ・痛みの原因
糸の緩み・糸の切れ
埋没法で使用する糸は、時間の経過とともに緩んでくることがあります。糸が緩んで瞼板の表面に露出すると、結膜や角膜を擦ることでキズをつけます。糸が切れてしまうことでもその断端によって同様にキズをつけることがあります。特に角膜はごく細かなキズでもゴロゴロ感や痛みなどを感じやすい組織です。
糸の感染
稀なことだと思いますが、糸と通糸部分に細菌感染が起こると、瞼が腫れたり炎症を起こして、痛みなどの原因となることがあります。
目の乾燥・ドライアイ
埋没法の手術後、まぶたの状態や形状が変化することで、目の乾燥が起こることがあります。まぶたの閉じが不完全になったり、就寝中に目が閉じ切らないことで、目の表面が乾燥します。また上下まぶたと眼球表面の結膜と角膜が接する部分には目の表面の涙が多く偏在する涙液メニスカスと呼ばれる部分があります。まぶたの形状の変化によって涙液メニスカスが崩れると目の乾燥の原因となります。目の乾燥は結膜や角膜のキズとなって、ゴロゴロ感や痛みの原因となることがあります。
埋没法後のゴロゴロ・痛みの治療法
糸の除去
緩んだ糸が瞼板に露出している場合は糸は除去することで症状を改善できます。糸が切れて断端が擦れている場合、糸が露出していれば容易に除去できますが、瞼板内に埋没していて、なかなか糸が見つからない場合があります。糸を除去するのが難しい場合は露出部と思われる箇所を凝固処置することで症状の改善が得られることがあります。
まぶたの皮膚側から糸を除去する場合は、一部皮膚を切開して除去する必要があります。
ドライアイの点眼
目の乾燥が原因となっている場合はドライアイの点眼薬や眼軟膏によって改善する場合があります。まぶたの状態、涙液層や涙液メニスカスの状態を観察して適切な薬剤を選択します。
糸を除去した症例
写真
最近目がゴロゴロするとの訴えがあった患者さんです。顕微鏡で検査すると角膜の上方にキズが見られました。まぶたの裏側にはナイロン糸が露出していました。数十年前に埋没法の手術を受けたことがあるとのことでした。糸を除去したところ角膜のキズは消失しました。
埋没法後の糸の露出には時々遭遇します。角膜のキズは細かなキズでも症状を強く感じることが多いものです。すぐに除去できる場合もありますが、断端が瞼板内に埋もれている場合は苦労することもあります。患者さんが体を起こしている状態と寝ている状態でも糸の露出が違っていたりします。
埋没法後の症状でお困りの方は相談にいらして下さい。