目の縁の小さなできもの、ポツッと赤く腫れていたり、白っぽいものやよく見ると透明な粒のようなものがあったり、それはマイボーム腺梗塞かもしれません。
マイボーム腺はまぶたにある脂の分泌腺ですが、その脂の成分が固まって腺の中で詰まってしまいます。特に症状も無い場合は様子をみていることもあると思います。まぶたの縁にあるので、自分でつまんだり、綿棒で押したりすると取れそうに感じることもあるかもしれません。実際に自分で潰している方もいらっしゃるようですが、それはあまりおすすめしません。マイボーム腺梗塞は眼科できちんとした治療を受けた方が良いと思う理由をお話しします。
マイボーム腺梗塞とは
マイボーム腺の役割
マイボーム腺は、まぶたに並んでいる小さな脂腺で、涙の油層を生成する役割を担っています。まぶたの縁にはマイボーム腺の開口部があり、ここから分泌された油分が涙液の表面の油層を生成し、涙が蒸発するのを防ぐバリアとして機能します。また油分は目の表面を潤滑に保つために不可欠です。マイボーム腺の機能が低下し油分の分泌が不足すると、ドライアイを引き起こします。
マイボーム腺梗塞の症状
マイボーム腺梗塞はマイボーム腺から分泌される油分の成分が、まぶたの縁にあるマイボーム腺の開口部付近で小さな塊となってできます。マイボーム腺梗塞の症状はいろいろです。梗塞が腺の中で止まっている場合は特に自覚症状がないこともあります。よく見ると半透明の白っぽい塊が見えます。梗塞が大きいものであるとだんだんと腺の開口部から梗塞が顔を出してきます。まぶたの縁で露出した梗塞の塊が白目(結膜)や黒目(角膜)にあたり、充血やゴロゴロと異物感を感じたり、炎症を起こしてまぶたの縁が盛り上がり赤くなることもあります。
マイボーム腺梗塞の治療法
切開して摘出
マイボーム腺梗塞は固い小さな塊です。腺の中で止まっている場合は圧迫したりしても取ることは難しく、切開して摘出します。針で切開することもありますが、当院ではなるべく周囲の組織にダメージを与えないように鋭利なメスの刃先を用いて切開することが多いです。マイボーム腺はまぶたに並んでいます。できるだけ隣のマイボーム線にダメージがないように小さく切開して、マイボーム腺梗塞を摘出します。切開した部分は結膜という粘膜ですので、傷は自然に閉鎖します。術後は抗菌点眼薬をつけていただきます。
自分で治すことは可能?
マイボーム腺梗塞の小さな塊が半分以上開口部から露出しまっている場合が稀にあります。そのような場合は圧迫したりすると取れる場合があります。ただし、時々複数個の梗塞がある場合があり、取り残してしまう可能性があります。マイボーム腺梗塞のほとんどの場合は腺の中で止まっていたり、一部分のみ露出していることが多いです。そのような場合では圧迫したり、つまんだりしても、取ることはかなり難しいです。無理をして取ろうと強く圧迫したり、つまんだりすると、炎症を起こしたり、周囲のマイボーム腺やまつげの毛根にダメージを与えたりするリスクがあります。開口部の結膜を切開して、無理なく摘出することが大切です。
放置した場合のリスク
マイボーム腺梗塞は小さなもので腺の中で止まっている場合は症状もほぼありあません。しかし、炎症を起こしたり、開口部から露出してしまっている場合は早めに切開し摘出したほうが良いと思います。炎症が強くなると周囲のマイボーム腺にダメージが広がったり、治った後もまぶたの縁に赤みが残ったり、縁がでこぼこ不整になったりするリスクが高まります。症状がない場合でも次第に大きくなり、いずれは露出してしまうことを考えると、摘出しておいた方が良いかと思います。
切開摘出した治療例1
下まぶたのマイボーム腺梗塞の切開摘出例をご紹介します。


マイボーム腺梗塞の半透明の塊が結膜を破って表面に露出しています。炎症が起きていて、結膜は盛り上がり、表面の血管は拡張して目立つため赤く見えます。


結膜を切開してマイボーム腺梗塞を摘出しました。点眼麻酔を行い、鋭利なメス刃で切開しました。摘出直後ですが出血もなく切開創も目立ちません。
切開摘出した治療例2
2例目は大きなマイボーム腺梗塞の治療例です。マイボーム腺開口部から結膜の奥に向かって、マイボーム腺に沿って白い塊が観察できます。メス刃で切開して摘出しました。3枚目の写真は摘出したマイボーム腺梗塞です。艶のあるやや黄色味がかった固い塊を摘出できました。



まとめ
マイボーム腺梗塞は日常の外来診療で時々見かける疾患です。炎症を起こしたり、大きくなって結膜から露出するといろいろな症状の原因となります。自然に排出することも少なく、適切に摘出することが大切です。マイボーム腺は油分を分泌して、目の表面で涙の蒸発を防いだり、潤滑にする重要な役割を持っています。マイボーム腺梗塞を治療する際には、できるだけ大切なマイボーム腺にダメージを与えないように配慮することが必要です。長い間放置したり、自分で取ろうなどと無理をしないことをおすすめします。