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  • 埋没法の抜糸:術後早期に行った症例の解説
  • 埋没法の抜糸:術後早期に行った症例の解説

    目次

    埋没法の二重手術を受けたけど、術後の仕上がりが自分の思っていたものと違っていたりして、抜糸したいと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。埋没法では、いわゆる”ハム目”と呼ばれるような幅の広すぎる二重や、二重のラインとまつ毛の間がぷっくりとしてしまった仕上がりになってしまうことがあります。この記事では、他院で埋没法を受けてから、約2週間後に当院で抜糸をした患者さんの術後のまぶたの変化を含めてご紹介します。

    初診時の所見

    受診までの経緯

    患者さんは年齢に伴ってまぶたの皮膚が弛んできたことが気になって、埋没法を受ければ目元がスッキリすると思い、美容外科に相談したそうです。お得な費用で手術が受けれるプランもあって、手術を受けることを決めたとのことでした。

    手術を受けた直後から、まぶたの形が思っていたものと違うことが気になって、手術を受けたクリニックへ抜糸をしてほしいと相談したそうです。手術が特別なプランだったことで、抜糸には高額な費用がかかると言われたため、当院へご相談にいらっしゃいました。

    まぶたの様子

    まぶたの二重の幅は広く、やや術後の腫れが残っているようでした。皮膚の表面のキズは目立った赤みもなく、術後の経過としては問題ないようでした。

    患者さんは3点留めの手術を受けたとおっしゃっていました。まぶたの皮膚を観察すると、片眼に3箇所ずつ糸を通したと思われる少しもりあがったようなキズあとが観察できました。

    埋没法を受けてからまだ1週間程度ですので、これから腫れがもう少し落ち着くにしたがって、二重の形は変わる可能性はあります。しかし現時点での二重の幅はかなり広く、今後も大きく印象が変わることはないと思いました。

    手術前のまぶた 正面視
    初診時のまぶたの様子

    抜糸の実際

    まぶたのマーキング

    埋没法の糸を通した3箇所のキズと思われる位置に少し離れたところでペンでマーキングをしています。麻酔の注射をすると皮膚が盛り上がるので、キズの位置がわかりにくくなることがあります。マーキングをしておけば、適切な位置で切開できますので、抜糸に必要な新たなキズをできるだけ小さくできます。

    手術前まぶたのマーキング
    まぶたにマーキングをします

    小切開で抜糸

    極細い針で切開をする箇所に少量の局所麻酔注射をします。そして鋭利なメスで小さく切開します。皮膚の下には皮下組織と筋肉があります。埋没法の糸の結び目(糸玉)は、ほとんどのケースで皮下組織の中にあります。筋肉は触ると出血しやすいので、切開も気をつけておこないます。

    小さな切開から皮下組織にある結び目を露出させています。結び目が見えるでしょうか? 切開の奥に黒っぽく見えるのが結び目です。

    皮膚の切開で露出した埋没法の糸の結び目
    小さな切開から見える糸の結び目

    結び目を切除して片眼2本ずつ、計4本の糸を抜糸しました。

    抜糸した埋没法の糸
    抜糸した4本の合成糸

    抜糸後1週間の状態

    抜糸のために小さく切開したまぶたの皮膚のキズは目立つ赤みもなく、とてもきれいな状態でした。不自然に広かった二重の幅は狭くなっています。患者さんは、これでお友達にも会えるとおっしゃっていました。

    抜糸後のまぶた 正面視
    二重の幅は狭くなりました
    抜糸後のまぶた 下方視
    切開のキズもほぼわかりません

    本来必要だった手術は?

    二重幅の左右差

    患者さんは、抜糸後は元のまぶたに戻ったとおしゃっていましたが、抜糸後の状態をよく観察すると、二重の幅の左右差があることがわかります。

    二重幅の左右差の写真
    抜糸後も右眼の二重の幅がより広い

    細かく観察すると、左眼はまつ毛の根本が一部見えそうですが、右眼は皮膚が覆い被さって、まつ毛の根本は見えません。まぶたの皮膚がまつ毛の上に乗っかっているような状態です。

    ここで、埋没法を受けた後、抜糸をする前の状態と抜糸後の比較をしてみましょう。

    はじめに右眼から。

    抜糸前の右眼
    抜糸前
    右眼の皮膚弛緩
    抜糸後

    抜糸前は、二重の幅は不自然に広くなっていますが、まぶたの皮膚はまつ毛に覆い被さることなく、まつ毛の根本も見えている状態です。埋没法をしたことで、皮膚が上に引き上げられていて、まぶたの皮膚の被さりを解消した結果になっています。ある意味、左右の眼の皮膚の被り具合の差が少し解消されています。まぶたの開き具合に差はないようです。

    次に左眼を抜糸前と抜糸後で比較してみましょう。

    抜糸前
    抜糸後

    やはり、抜糸前は二重の幅が不自然に広くなっています。抜糸後も、まぶたの皮膚とまつ毛の関係は大きく変わっていません。まぶたの開き具合にも差はありません。つまりは、埋没法によって、幅広の二重幅ができただけという結果でした。

    ややこしい話になってしまいましたが、お解りいただけたでしようか?

    皮膚切除か眼瞼下垂手術

    埋没法を受ける前に、患者さんがご自分の目またはお顔の状態をどのように感じていて、どのようにしたいのかで、当然手術の内容も変わってきます。二重の幅を広くしたいというご希望があれば、今回の埋没法の結果もご本人にとって満足したものだったかもしれません。

    今回の患者さんにとって、どのような手術をおこなうのが良かったのでしょうか。手術前に患者さんのご希望を聞くことは大切です。もし、右眼の皮膚の被さりを改善して、左右差をなくすことで満足が得られそうであれば、二重ラインに沿って皮膚を切除するような手術をおこないます。
    そうではなくて、両眼ともに、もう少しまぶたの開き具合を良くする(大きくする)ことをご希望であれば、眼瞼下垂の手術をおこないます。その際に、左右のまぶたの皮膚の被さり具合を調整して、バランスよく仕上がるようにします。

    といっても、まぶたの手術はそんなに簡単ではありません。眼はふたつあるので、どうしても左右の差が目につきます。ほんのわずかな差が見た目に影響します。特に美容目的での手術では、患者さんの要求度も高くなります。

    今回の患者さんは、おそらく眼瞼下垂の手術をおこなうことが、ベストチョイスだったような気がします。患者さんは、どのような感じになりたいかをドクターに伝えることはできても、そのためにはどのような手術を受けるのが良いかはわかりません。

    まとめ

    埋没法の抜糸では、手術を受けてから時間が経つほど、組織の癒着などで元のまぶたの状態に戻りづらくなると考えられます。もちろん、術後は手術の影響で腫れがでますので、時間とともに腫れが落ち着くと、まぶたの形、二重の状態も変化していきます。術後の仕上がりに不安がある際は、手術をしていただいたドクターに相談することをおすすめします。

    まぶたの皮膚からの抜糸は、特に手術後の早い時期のものでは、大きなリスクもなく、いわゆるダウンタイムも少ないことがほとんどです。

    当院では、さまざまな抜糸処置もおこなっておりますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。

    この記事の監修

    院長

    伊藤学

    ・東京慈恵会医科大学附属病院
    ・東京女子医科大学糖尿病センター眼科
    ・富士市立中央病院眼科部長
    ・オリンピア眼科病院
    ・溜池山王伊藤眼科開設
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