埋没法による二重手術は比較的簡単に行えることから人気があります。まぶたに糸を通すことで、人工的に皮膚が引き込まれるようにして二重を作る手術ですが、ナイロン糸などの合成糸がまぶたの中に留置されたままになります。この糸や手術の操作が原因でトラブルが起こることがあります。今回は埋没法を受けた患者さんのまぶたにできたしこりの治療例をご紹介します。
初診時の所見
受診までの経緯
5日前から左眼の上まぶたにできものができて眼科を受診したとのことです。その眼科の診察では表面を小さく切開して、抗生物質を処方されたが、すべて飲みきってもまぶたのできものが治らないということで当院を受診されました。2ヶ月前に埋没法の二重手術を受けたということでした。
所見
まぶたの二重のラインの中央に赤みを伴ったしこりができていました。触ると比較的やわらかい腫瘤で、強い痛みはありませんでした。上のまぶたにできるしこりで多いのは霰粒腫です。霰粒腫は瞼板内にできて大きくなるので、しこりができるのはもう少しまぶたの縁に近い位置にできます。今回のしこりは二重のラインにできているので霰粒腫とは違う印象がありました。二重のラインにあることから、埋没法の糸が原因の可能性もあります。赤みを帯びているので、炎症が起こっているようでしたので、念のため抗菌剤の内服薬を追加して、しこりの摘出手術を予定しました。


しこりの摘出手術
皮膚の切開
埋没法でできた二重のラインはできるだけ崩したくないので、最初に二重のラインをペンでマーキングしました。次にまぶたの裏側と表面に麻酔の注射をおこないます。まぶたを器械で挟んで、皮膚を二重のラインに沿って切開しました。
しこりの切除と糸の除去
まぶたは皮膚を切開すると眼輪筋というまぶたを閉じる時に作用する筋肉があります。眼輪筋を切開すると、霰粒腫のような肉芽組織がありました。この肉芽組織がしこりの本体だとわかりました。肉芽組織をきれいに取り除いていくと、ナイロン糸が現れました。糸を摘んでゆっくり引き抜くと、糸の一部がとれました。
通常の埋没法で使用する合成糸は、生体組織への反応が少ないもので炎症などの反応は起こりにくいものです。しこりの同じ場所に糸があったことを考えると、糸あるいは手術操作が原因で肉芽様のしこりが形成されたと思います。


皮膚の縫合
最後に皮膚をナイロン糸で2糸縫合しました。まぶたを器械で挟んだ丸い跡がついていますがすぐに消失します。手術は20分程度で終了しました。この日は眼帯で帰宅していただきました。翌日からの洗顔は可能です。清潔に保ち、軟膏を塗布していただきます。

術後の経過
術後2日目
術後翌々日のまぶたの状態です。ナイロン糸で2針縫合してありますが、強い腫れはなく、内出血も軽度です。すでにまぶたのしこりは小さくなっています。赤みも減り、炎症が良くなっています。


術後7日目抜糸
経過は問題なかったので、術後7日目に抜糸しました。まだ創口はやや赤みがあり盛り上がっています。正面から見えていたしこりはかなり小さくなりました。


術後3週間
手術後3週間の眼瞼の状態です。正面視では術前にあったようなしこりはなくなっています。手術の創口はやや赤みが残っていますが、平坦になっています。時間が経過すればさらに目立たなくなると思います。


二重の幅も左右差はなく、糸を除去しても現状では二重の形に大きな変化はないようでした。とてもきれいになりました。
埋没法後のしこりや腫れの処置
抜糸の必要性
当院では、これまでにも埋没法後のしこりや腫れの患者さんの診察をしてきました。赤みのある腫れやしこりの場合、特に痛みのある場合は細菌感染の疑いが強くなります。抗菌剤の内服などで軽快する場合もありますが、抜糸をしてしまったほうが、その後の経過も良いと思います。異常を感じた際は早い対応が大切です。
当院の手術
当院では手術用の顕微鏡使用して精密な処置を行っています。今回のような大きなしこりだけでなく、表面の小さなしこりなどにも対応します。
さまざまな抜糸処置もおこなっておりますので、お困りの方のご相談をお待ちしております。