霰粒腫は、日常診療でよく見かける疾患です。早い段階での治療で治ってしまうこともありますが、なかなか治らずに困っている方も多いのではないでしょうか。腫れたまぶたによって、視界が悪くなったり、痛み、見た目の悪さなど、患者さんにとっては不快な症状が続いてしまいます。治療としてステロイド注射を行うことがありますが、万能ではありません。当院では日々、霰粒腫摘出術を多く行なっています。最近当院を受診された、ステロイド注射を行っても治らなかった霰粒腫の患者さんに、皮膚切開を行い摘出した症例を紹介し、霰粒腫の切開手術に関する適応や方法、手術後の経過について解説します。
霰粒腫とは?
霰粒腫の症状
霰粒腫の原因
霰粒腫は、まぶたの脂腺(マイボーム線)が閉塞することで起こります。ストレス、疲労、ホルモンバランスの乱れ、目の乾燥、目の周りの清潔さ、まぶたの炎症など、さまざまな原因で脂腺が詰まると考えれらています。短期間に複数の霰粒腫ができることもあります。
霰粒腫の手術方法
瞼板の中の肉芽腫の除去
皮膚切開とまぶたの裏側切開
手術方法には、まぶたの表面の皮膚を切開する方法とまぶたの裏側を切開する方法があります。霰粒腫の状態によってアプローチの仕方を決めます。まぶたの裏側の粘膜と表面の皮下に局所麻酔を行います。麻酔薬にph調整のためのお薬を混ぜて注射の時の痛みを軽減できるようにしています。
皮膚切開の長所・短所
まぶたの表面の皮膚を切開する方法は、霰粒腫が皮膚の表面の直下まできている場合や皮膚を破ってしまっている場合に行います。このようなケースでは感染で炎症が起きていて、瞼板から眼輪筋、皮膚へとダメージが拡がっています。皮膚を切開することで、ダメージを受けている組織をしっかり取り除くことがしやすくなります。皮膚を横に切開し、最後に細いナイロン糸で縫合する必要があります。約1週間後に抜糸をする必要があります。
まぶたの裏側切開の長所・短所
まぶたの裏側からの切開では、ごく薄い粘膜を通して瞼板にほぼダイレクトにアプローチできます。通常、切開は縦方向に行いますが小さな傷口になりますので治癒が早い、縫合の必要がないなどのメリットがあります。一方、小さな傷口から大きな肉芽腫を除去する場合、直接見えない部分を除去しなくてはならないため、しっかり操作して取り残しがないように注意しなくてはなりません。
術後の管理
手術は10~20分ぐらいで終了します。眼帯をして帰宅していただきます。手術後に強い痛みがでることはほぼありませんが、痛み止めの処方をします。眼帯は自宅で外しても問題ありません。翌日からの洗顔などは可能です。点眼薬や抗菌薬の内服を続けていただきます。術後数日間は腫れや内出血などが見られますが、1週間後の診察時にはかなり改善していることが多いです。縫合がある場合は抜糸を行います。
皮膚切開で霰粒腫摘出を行なった例
受診までの経過
所見
左上まぶたに赤く腫れたしこりがあり、中央は白っぽく見えます。周りから太めの血管がしこりに向かって延びています。おそらく炎症が長く続いていた影響でしょうか。ちょっと突っつけば内容物が出てしまいそうな感じです。ステロイド注射で使う薬剤は懸濁性の薬剤で白い顆粒が含まれるものです。皮下の浅いところに注射すると、その皮下の顆粒が皮膚から透けてみえてしまうことがあります。
一見それほど大きくないように見えますが、触れてみるとしこりは左右に大きく、肉芽腫が拡がっているように感じました。
皮膚切開で霰粒腫摘出
皮膚を横に切開してダメージを受けている眼輪筋を少し切除して、肉芽腫を切除摘出して、表面をナイロン糸で縫合しました。術後1週間ではやや赤みがありますが、しこりはほぼなくなっています。抜糸をしました。
手術2週間後
切開部分の赤みも減り、目立たなくなりました。切開すると二重のラインが変わってしまうのではと心配される方がいらっしゃいますが、通常影響はありません。霰粒腫が腫れている時には二重のラインが崩れてしまっていますが、治った後は綺麗な二重ラインが戻っています。
まとめ
霰粒腫は点眼薬や内服薬で治ることもあるので、必ずしもすぐに手術を行う必要はありませんが、こじれてしまうと、なかなか治らずに患者さんを悩ませます。ステロイド注射も効果的である場合もあるようですが、僕自身はあまり行いません。
手術は切開しても再発してしまうこともありますが、時間がかかっている霰粒腫には有効な手段だと思います。皮膚からの切開はキズが残らないかと心配されるかと思いますが、時間が経つとほぼわからなくなります。霰粒腫でお悩みの方は是非当院にご相談ください。