眼瞼下垂はまぶたが下がってしまうことで視界が狭くなり、日常生活に支障をきたすこともある疾患です。自分の顔を見た時に、最近まぶたが下がってきたなと感じる方も多いのではないでしょうか。加齢やコンタクトレンズが原因の場合にはゆっくりと症状が進行します。気づかないうちに、自然とおでこの筋肉を使ってまぶたをあげようとして、おでこに深いシワができていたり、疲れやすくなったり、人によっては頭痛の原因となったりします。眼瞼下垂は手術によって治せるものも多く、最近は手術を受ける方が増えています。本記事では眼瞼下垂の症例と実際に行った手術について解説します。
眼瞼下垂の概要
眼瞼下垂の分類
眼瞼下垂の診断
眼瞼下垂の症例紹介(50代女性)
手術前の状態
両眼の眼瞼下垂がある患者さんで、強度近視のため長期にわたるハードコンタクトレンズの装用歴があります。右眼はミューラー筋タッキングという方法で、過去に眼瞼下垂の手術を受けています。
眼の状態を観察していくと、両眼ともに眼瞼下垂があります。二重の幅も広くなっています。眼瞼挙筋やその腱膜の緩みがあると二重の幅が広くなります。MRDにはあまり大きな差はありませんが、左眉毛が右眉毛より少し上がっています。おでこのシワは左の方が深く見えます。この患者さんは左眼の眼瞼下垂のほうが右眼より程度が強く、普段からおでこの筋肉を使ってまぶたを上げている可能性があります。
左眼の手術後経過
眼瞼下垂の程度が強いと思われる左眼の手術から行いました。今回は挙筋腱膜前転法という手術方法で行いました。二重のラインに沿って皮膚を切開して手術は行います。挙筋腱膜を瞼板から外して、前方に移動させ、再度瞼板に縫合する手術です。
術後1週間では内出血がまだ少し残っていて、まぶたの腫れも少しあります。二重の幅はだいぶ狭くなっていますが、まだ腫れている影響で広めになっています。切開創は問題ないようでしたので抜糸をしました。まぶたはしっかり上がっています。
術後1ヶ月ではまぶたの腫れもほぼなくなりました。まぶたの開きも良好です。やや開きが強めに感じますが、右眼の眼瞼下垂の手術を行うと、左眼のまぶたが少し下がってバランスが取れると思います(ヘリングの法則)。
右眼の手術後経過
次に右眼の手術を行いました。左眼と同様に挙筋腱膜前転術を行いました。右眼は再手術になるので、前回手術の瘢痕を処理しながら慎重に手術をしました。術後1週間ではまだ少し腫れていますが、目立った内出血もなく経過良好でしたので抜糸を行いました。術後1ヶ月ではまぶたの腫れは改善しています。
切開創の状態
今回の手術では二重のラインに沿って切開を行なっています。左眼は術後約2ヶ月半、右眼は1ヶ月後の切開創の様子です。メイクの影響でわかりにくいですが、先に手術を行った左眼はやや赤みが残っていますが、かなり落ち着いてきています。右眼は左眼に比べると、赤みとやや腫れている感じがありますが、次第に落ち着きます。6ヶ月ほどすると、傷跡はかなり目立たなくなります。
まとめ
今回は眼瞼下垂について手術の症例も紹介して解説しました。手術から1週間後の状態と1ヶ月後の状態を見ていただくことで、実際の術後の状態がイメージできたのではないかと思います。当院では高周波メスを使用し、できるだけ出血を抑えながら手術をすることで、術後の腫れを少なくして、回復が早い手術を心がけています。
ほとんどの眼瞼下垂は加齢や長期コンタクトレンズ装用に伴うものですが、まれに神経疾患による眼瞼下垂にも遭遇します。
今回の症例のように加齢やコンタクトレンズによる眼瞼下垂は手術による治療が可能です。手術方法はいくつかありますが、患者さんの眼瞼下垂の状態によって選択します。
当院では保険適応の眼瞼下垂の日帰り手術を行なっています。症状が気になる方のご相談をお待ちしております。