甲状腺眼症 斜視手術症例
症例1
手術前
正面を見ている時に左眼が上に大きくずれていますが、上を見ている時の写真では右眼の上がり方が悪いことがわかります。右眼の下直筋が肥大化して筋肉が引っ張られ伸びなくなり上転障害となっています。
この患者さんは右眼が利き目のため、上にあがりにくい右眼を自然に力を入れて正面にして見ているため、その大きな力が左眼に伝わり、左眼が上がりすぎています。
手術翌日
右眼の下直筋後転術を施行した翌日の写真です。
右眼が上がりやすくなったことで左眼に伝わる力が減り、左右の眼のずれがかなり減りました。
しかしまだ左眼が右眼より上にあります。
追加手術後
左眼の上直筋後転術を追加しました。左眼の上がりすぎを抑えることで複視の自覚は消失しました。
眼球の動きや斜視の状態によって複数回の手術が必要になりますが、多くの症例で複視による日常生活の不自由さを改善できます。
症例2
手術前
手術翌日
左眼の上直筋後転術を施行した翌日の写真です。
正面を見ている時の左右の眼のずれが消失しています。下方を見る時に左眼が十分に下がるようになっています。
手術は調節糸法で行なっているため筋肉をずらすための糸を残してテープで固定してあります。
調節糸埋没後
眼の位置や動きを検査して、必要に応じて調節糸を用いて筋肉の移動量を調整します。その後に糸を短縮切除して結膜(白目)下に埋没します。
手術1ヶ月後
正面の複視の自覚はなくなり、下方視での複視もほぼなくなり、日常生活の不自由も改善されました。
症例3
手術前
左眼の上転障害がとても強い例です。左眼が下方に強く引っ張られ偏位しています。どの方向を見ても複視の自覚があり、患者さんは顔を傾けてできるだけ見やすい位置を保とうとしていました。
手術翌日
左眼の下直筋の周囲にあった瘢痕癒着組織をできるだけ切除して下直筋を後転しました。
手術翌日の写真ですが正面の複視の自覚はほぼ消失しました。眼球運動の経過をみて調節のための糸の処理を行います。
下直筋を大きく後転すると眼球の下方への動きが抑制され下方視での複視が起こることがあります。
手術2週間後
術後2週間の写真です。正面の複視の自覚はなくなり、下方での複視も問題ないようでした。術後時間の経過とともに眼球の動きや位置は変化することがあります。下方視での複視が強まるようであれば、右眼の下直筋を後転することで改善させることができます。経過によって追加の手術が必要になることがあります。
*写真の掲載をご快諾いただきました患者様に感謝いたします。